2011年4月11日月曜日

あるファミレスでの出来事。

女子高生A
「あの芸能人誰だっけ?あの~…結構おじさんで。え~と…ど忘れしちゃったなぁ。」

女子高生B
「え~?おじさん?最初の文字何から始まるとかは覚えてないの?」

女子高生A
「え~とねぇ…確か“せ”だったと思うんだけど…。」

隣の席の客
「センチメンタル平方。」

女子高生A、B
「え?」

隣の席の客
「センチメンタル平方!1985年に開かれた第82回六本木センチメンタル王決定戦に彗星のごとく現れ、当時絶対王者とまで言われていたノスタルジック副島に圧勝し優勝して以来、その後10年間誰も彼には敵わなかったが、突然引退を宣言。その後姿を消して、今はアパレル関係の仕事に就いていると噂されてるあのセンチメンタル平方だよ!」

女子高生A
「いや…あの誰ですか?そのセンチメンタルひら…」

ガタッ!

さらに隣の客
「いや!少し訂正させてもらいます。誰も敵わなかったと言いましたが、90回大会の準決勝で、彼はその生涯で唯一の判定勝ちを経験しています。実際に本人も後のインタビューで、このとき戦ったメンタルマネージメント松原のことを自分の後継者となるであろう器として称賛しており、一歩間違えばあのとき自分は負けていたかもしれないと語っています。突然の引退も、次の大会では確実に成長しつつあるメンタルマネージメント松原には勝てないとの思いで引退したのではないでしょうか?」

女子高生A
「メンタル…マネージメント松原…?あの…なんの話をして…。」

コトッ

女店員
「お客様。失礼ですが、それは違うと思われます。引退の直前、彼は最愛の母であるフロアディレクター平方を亡くしています。当時、彼がやっていたラジオでも本人がこのことについて触れ、人目もはばからず泣いたのを私もリスナーとして聞いていました。彼は以前から母親が自分の強さを支えている等の発言をしており、母親の存在は彼にとって、とても大きなもので、その支えを失ったことが、彼に引退を決意させたんだと私は思います。」

女子高生A
「いやだから何の話を…。あと私が頼んだのコーヒーじゃなくて紅茶なんですけど…。」

カランコロンカーン

紳士風の来客
「一名なんだがよろしいかな?反論させていただいても。私は実はあの大会に長年関わっていた者でね。彼とは何度も会ったことがあるのだが、彼はそんなことで引退するほど弱い人間ではないよ。むしろその悲しみをバネにするようなそんな心の強い人間だった。実際に母親を亡くしたあと、彼に会ったときには、彼は天国にいる母親のためにも、これからさらに頑張らなくてはいけないと言っていたよ。」

隣の席の客
「では…なぜ彼は引退を…?」

紳士風の来客
「…。彼の引退には、あのノスタルジック副島が関わっていると、私たちの間で噂されていた。絶対王者と言われていた当時から彼には悪い噂があってね…。八百長だよ。彼は対戦相手や大会実行委員に金を渡し、勝敗を操作しているのではないかと疑わていたんだ。センチメンタル平方はそのことを知り、ひとりでその問題と戦っていた。しかし…敵は大きすぎた。彼はその巨大な敵に押し潰されてしまったんではないかと、今ではそう思うんだ…。あのとき、私がそのことに気づいて彼の手助けをしてあげていたら…!私は今でもそのことを後悔してしまうことがあるんだよ…。」

女子高生A
「え~…。これなんなの?ねぇもうここ出ようよ。」

女子高生B
「…。センチメンタル平方は…。センチメンタル平方は、私の父です!」

隣の席の客・さらに隣の客・女店員・紳士風の来客
「え……?」

女子高生A
「えぇー!?」

女子高生B
「父は…小さい頃の私によく当時のことを語ってくれました…。でも引退したことを後悔していると言ったことは一度もありません!メンタルマネージメント松原さんのことも、私の祖母にあたるフロアディレクター平方のことも、他にはストレートパーマネント福田さんやモスコミュール今村さんのことも、父からよく聞かされました。そして…ノスタルジック副島さんのことも…。そこのおじいさんが語ったように、父は八百長の問題と常に戦っていました。おそらく父はセンチメンタル業界そのものの未来のことを思って、世間にはこの問題が漏れないように一人で戦っていたんだと思います。父は引退したその後もずっと六本木センチメンタル王決定戦のことを気にかけていました。そして、八百長の問題もノスタルジック副島さんの逮捕とともになくなりつつあり、今では毎年大会も見に行って、そのたびに若い力が成長していると嬉しそうに話すんです…。だから後悔はしていないと。だから…だからおじいさんも、もうあのときのことを振り返って後悔するのはやめてください。父はおじいさんのこともよく話してくれるんですよ?とてもいい審判だったって。」

紳士風の来客
「うっ…うううう…。彼は…彼は元気なんだね…?」

女子高生B
「はい。もう歳なんだからやめてって言うんですけど、毎日ひとりでセンチメンタルになってるんですよ?もう元気が有り余っちゃってるみたいで。」

紳士風の来客
「フフッ。彼らしいなぁ。私も…私も今年は久しぶりに、六本木センチメンタル王決定選を観に行こうとするかね。」

女子高生B
「父も観に行くでしょう。多分あなたにも会いたがってると思いますよ。」

パチ…パチ…パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

隣の席の客
「泣かせるじゃねえか!」

女店員
「私…私感動しちゃった!」

さらに隣の客
「さすがセンチメンタル平方の娘!とてもセンチメンタルな気分にさせられましたよ!」

紳士風の来客
「よし!これからみんなでセンチメンタルになりに行くとしようじゃないか!」

隣の席の客・さらに隣の客・女店員・女子高生B
「行きましょう!」

ゾロゾロゾロ

カランコロンカランコロンカランコロンカン

女子高生A
「…。え~…なんだったの?マジで。何?六本木センチメンタル王決定戦って。なんか気持ち悪い夢見てるみたい。ちょっとあの子との関係も少し考えよう…。友達1人なくしちゃったなぁ…。ん?友達?フレンド?…あ!思い出した!“せ”で始まる芸能人!関口宏だ!あ~もう関口宏が出てこないばっかりに、友達一人なくしちゃったよ!もうこんなの私が一番センチメンタルな気分だわ!」

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